クラウド市場動向の変遷と、パブリッククラウドの課題
近年、企業は様々な理由から「クラウドファースト」を前提としたインフラ戦略を展開していますが、一口にクラウドといっても、ニーズやトレンドは変化を続けています。今回はクラウド市場の変化と、最近のトレンドの1つである"国産クラウド"をテーマに考えます。
クラウド市場の変遷
クラウドの市場変化を見るうえで、まず日本のITの歴史を振り返ってみたいと思います。以下は日本のITの歴史をインフラ視点で、ざっくりと表現したものです。
コンピュータが始まったころ黎明期の頃は、オンプレミス中心、というかオンプレが唯一の選択肢でした(当時は、オンプレという言葉もなかったと思います)。
その後、大体2000年ぐらいから、"所有から利用への流れ"といったキーワードをもとに、例えば従量課金、コスト適正化への期待があり、世の中的に、ホスティング、レンタルサーバー、ASPといったもの広がってきました。(この頃、当社(CSK時代)は、現在展開しているUSiZEの前身ユーティリティコンピューティングサービスを2004年から開始しています。)
2010年代から、パブリッククラウドの爆発的な普及時代が到来しました。コストの最適化に加えて、柔軟性の期待など、IaaS領域を超えた様々なクラウド技術の拡充が広がってきています。
パブリッククラウドの普及期を経て、さらに最近よく我々が耳にする言葉として、最適なクラウドの使い分け(具体的にマルチクラウド・ハイブリッドクラウドと言われたりしますが)、オンプレ回帰、ソブリンクラウドといったキーワードが、今の市場を見るうえで、重要なキーワードとなっています。
パブリッククラウドに期待される点とよくある課題
パブリッククラウド環境の利便性やサービスの拡充が進むなか、パブリッククラウドファーストの方針でシステム環境を整備されているお客様は増えています。パブリッククラウドに期待される点として、以下のような点がよく挙げられます。
●グローバルインフラの持つ豊富なサービス
●インフラコスト削減
●弾力性のあるインフラ構築
●ITスタッフの生産性向上
一方で、パブリッククラウドの移行や利用に関して課題も見えてきました。
機微な情報を取り扱っておりパブリッククラウドへの不安がある/商用ライセンスをパブリッククラウドで使おうとすると、ライセンスコストが高額になる/パブリッククラウドに対応できる人材がいない/監査要件でデータシステムのデータやシステムの保存場所を明確にする必要がある/塩漬けの対応や古い OS の利用に対しては、パブリッククラウドが当てはまらない、といった点です。
上記のような課題をどう解決するかが、クラウド導入の成功と定着のための重要なポイントになります。
パブリックファーストからの変化
パブリッククラウド全盛の中、企業の選択はパブリッククラウドありきでプライベートクラウドを選択肢とする線はないのではないかと思われるかもしれませんが、プライベートクラウドの市場全体の成長率は鈍化しているものの、2021年から26年には2.5倍と予想している調査会社もあります。
その理由として、上記の図に挙げられているような、パブリッククラウドに行きたいけどいけない理由があったり、最近の国際情勢の変化による経済安全補償の懸念から、政府が国産クラウドの推進を後押しする動きがあることが、企業に大きな影響を与えていると考えられます。
パブリックの不安を解消するクラウドの条件とは
クラウドのメリットを享受しつつ、パブリッククラウドの不安を解消できるクラウドには、どのようなことが求めらるでしょうか。
前述のパブリッククラウドでよくある課題を解消するために、セキュリティの観点では、独自のセキュリティ要件を充足させ、データシステムデータやシステムの所在を明らかにすることが可能であること、ライセンスコストの観点では、当該メディアミドルウェアが動作しうる環境を限定することで、ライセンスコストの適正化が可能になること、 現行踏襲の観点では、現状環境を可能な限り維持したままで、クラウドのメリットを享受できること、これらの条件が求められると考えます。
まとめ:パブリッククラウド以外の選択肢にも目を向けてみよう
クラウドを含むIT市場の変遷の振り返りと、パブリッククラウドの強い点/弱い点、そしてパブリッククラウドの弱い点(課題)をカバーするクラウドの条件について考えてみました。
SCSKのプライベートクラウド「ユーサイズ」は、これまで述べてきたようなパブリッククラウド移行の様々なハードルを解決できるサービスです。お客様の安全なクラウド移行と最適なクラウド活用に伴走します。